連載コラム【 旅するようなお茶時間 】vol.6

「ホコト」マネージャーが選ぶ一冊の本
第六回 『園芸家12カ月』カレル・チャペック/著  小松太郎/訳 (中公文庫)

こんにちは、hanaです。新しい月がはじまる朝にカレンダーをめくる瞬間がとても好きです。今回もハヴァナイストリップさんのコンセプト~旅発想からはじまる大人のライフスタイル~に合わせ、一冊の本から時空を超えて心の旅をしたいと思います。どうぞお付き合いください。

ベランダガーデニング

前回予告では秋のガーデニング準備についてお話をしようと思い、それにまつわる本を選びました。ところがその後ひょんなことから生後3ヶ月の子猫を引き取ることになり(その話はホコトのブログに書いていますのでよろしければお読みください)、ガーデニングどころではなくなってしまいました。調べてみると猫には中毒を起こす植物もたくさんあるとのこと。室内にあった観葉植物などひとまず全てベランダに移し、家の中は完全に子猫シフト。ゆっくり読書できる気分でもありません。

室内から外を眺める子猫

そこで近場のお出かけへと進路変更。行き先は「神戸市立小磯記念美術館」。幸い暑さも少し和らいできましたので近くの駅から六甲ライナーという無人運転列車で六甲アイランドへと向かいました。

アイランド北口駅からの眺め

アイランド北口駅で下車すると、すぐ前に小磯記念美術館のモダンな佇まい。神戸生まれの洋画家・小磯良平の作品を所蔵するこの美術館は1992年の開館以来、広く市民に親しまれています。今回は現在行われている展示「秘蔵の小磯良平ー武田薬品コレクションから」の中でも特に、薬用植物画の原画を楽しみに伺いました。

小磯記念美術館外観

ちょうどお昼時間だったのでまずは館内にある「KOISO CAFE&SHOP』にてランチをいただくことに。メニューを見ると、フードもデザートもいろいろとある! 迷いに迷って選んだのは”全粒粉パンの出し巻きサンド” 税込1200円、自家製ピクルスとホットコーヒー付き。分厚く焼かれた出し巻き卵はほんのり甘く全粒粉パンとよく合ってとても美味しい。ソーシャルディスタンスの取れる静かな店内でゆったりと過ごし、豊かな気持ちのひとときになりました。

ランチメニューの出し巻きサンド

光の入る店内でコーヒーと共にしばらくの読書タイム。本は今回選んだカレル・チャペックの『園芸家12ヶ月』(中公文庫)。チェコの生んだ著名な作家カレル・チャペックはジャーナリストから劇作家として成功し、小説や童話に加え、愛犬のことを綴った『ダーシェンカ』という愛らしい本も書いています。そんな彼が園芸マニアの12ヶ月を描いたこの一冊は、ユーモアと皮肉に満ちていて笑わずにはいられません。例えば、3月は花壇にとっていちばん大切な月であり、春の準備のために北風や霜と真剣に戦わなければならない。また、8月の園芸家は人並みにバカンスへ出かけるのだが、留守中の庭が気になっていてもたってもいられず、世話を頼んだ友人に連絡をし続けてた末に帰宅早々文句を言う(迷惑な話)などなど。90年以上も前のチェコ文学作家の目線ではありますが、今なお愛され読み継がれている名エッセイです。

『園芸家12カ月』カレル・チャペック/著  小松太郎/訳 (中公文庫)

コーヒーを飲み終わったところでようやく展示へと向かいました(美術館のカフェは居心地がよくて、つい本来の目的を忘れてしまうことがあります)。
武田薬品の六代目社長と小磯良平は交友が深く、武田薬品コレクションにも重要な作品が多く含まれています。また、「武田薬報」の表紙を13年間飾った薬用植物図は、実際に見ると写実に徹した素描、自然に即した色彩が巧みで感激しました。記念に画集を買いましたが、繊細な植物画と共に分類や効用も記載されており、手元に置いてずっと楽しめる一冊になりそうです。

小磯良平の描いた 薬用植物画

美術館の中庭には住吉山手にあったアトリエが移築され、ありし日の作画風景を追想することができます。画伯が好きだったというミントグリーンが随所に使われた温かい雰囲気のアトリエには、実際に使用したイーゼルやパレット、家具が配置されていました。中庭にもたくさんの樹木が植えられており、葉物の多い8月にサルスベリだけがピンクの花をつけていたのが印象的でした。

美術館中庭にあるアトリエ

番外編として、購入して良かったハヴァナイストリップさんのアイテムをひとつご紹介。こちらの「アクセサリーケース」は手にすっぽり入るサイズで指輪、ピアス、ネックレスなどを収納できます。もともとの用途はホテルなどの旅先で大切なアクセサリーをなくさないようにするものだと思うのですが、昨今は外出時にマスクが必需品となり、そこにイヤリングもつけると耳が痛くて疲れてしまいます。そこで私は使いたい場面以外はアクセサリーをこちらのケースにしまって持ち歩くようにしています。

アクセサリーケース

アクセサリーケースの素材は本体が合皮、裏面はスエード調生地。カラーは写真のベージュ以外に、レッド、イエロー、グリーンの4色があり、学生時代からの友人に色違いでプレゼントしたところ、みんなとても喜んでくれました。お揃いのものを持つなんて、なんだか女学生っぽくていいねと久しぶりにときめいた、この夏の小さなエピソード。

最後に嬉しかったお話をひとつ。担当の方から、お客さまがコラムで紹介した本を図書館で借りる際の参考にしてくださっているとお聞きしました。そのような反響があると励みになります。どうもありがとうございます。しばらく短編集やエッセイが続きましたので、少しほろりとする長編小説をセレクトしたいと思い、現在探しているところです。次回もどうぞよろしくお願いいたします。夏のお疲れが出ませんように。

文と写真:hana(ウェブサイト「ホコト」マネージャー)

3歳から一貫してピアノとパンが好き。
モットーは毎日のお茶時間を豊かに過ごすこと。
よく読むのは旅や暮らしのエッセイ、小説など。

コラム内でご紹介のアクセサリーケース

yamaoka
連載コラム 旅するお茶時間

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